ブランドの条件 (岩波新書)
こんなの見つけましたよ!!
ブランドの条件 (岩波新書)
山田 登世子
定価: ¥ 735
販売価格: ¥ 735
人気ランキング: 54101位
おすすめ度:
発売日: 2006-09
発売元: 岩波書店
発送可能時期: 通常24時間以内に発送
帝国的快楽
フランスのラグジュアリーブランドについて描かれており、いわゆるマーケティング的スタンスから書かれたブランド本とは趣が違うが読んでいて面白かった。("書かれた"というより、どちらかというと"描かれた"、という印象)。
そのためブランドについての普遍的根拠を明らかにしている、というよりフランスというローカルな場所が何を産業として成功させているか、という読み方の方がすっきりするかもしれない。
この本の最後の方に「ラグジュアリーは帝国主義を内にかかえこんでいる」という下りがあるが、ここにこの本の内容が集約されているように感じる。フランスという国の、植民地支配を含む歴史的存在がここで紹介されているブランドの背景にあるものなのだ。
なぜこうしたブランドを所有したいか。理由は、そこに帝国主義の快楽の存在をかすかに感じるからなのかもしれない。
ブランドの力
同じ素材、同じ手順で作られていても、それが「ブランド」ものであれば、商品の価格はグンと上がる。それが一体何に由来するものなのかを解明するために、本書ではルイヴィトン、エルメス、シャネルを取り上げて考察している。
日本人女性の44%、日本の2?3千万人の人がルイヴィトンの商品を所有していると言われているらしいが、その数値を聞いても別に驚かないぐらい、街中でルイヴィトンを持った人を見かける。あれだけ多くの人が持っていて「ブランド」自体の価値が下がらないのだろうかと不思議に思っていたが、それは全てルイヴィトンの戦略によって上手く調整されているらしい。
本書で取り上げられている三つのブランド、すなわちルイヴィトン・エルメス・シャネルの内、シャネルの取った戦略は他の二つが取った戦略とは全く違ったものだったようで、読んでいてかなり面白かった。
ただそれは、どちらが正しいということでもなく、どのブランドも個性があって、考え方がカッコいい感じた。
新書という制限もあって、三つのブランドからしか議論を組み立てられていないところが少し残念な気もするが、この三つのブランドに関しては、なぜ価値があるのかについて知ることができるし、それをその他大勢のブランドに当てはまることも可能だと思う。
なぜブランド商品は高いのか。それを知りたい人は是非どうぞ。
おフランスざんす
エルメス・ヴィトン・シャネル、それぞれの歴史をたどりつつブランドオーラの起源をを掘り起こす。
エルメスが伝統志向で、シャネルはもともとマス志向である、
というのはなんとなく知ってはいたが、あまりはっきりとは意識してなかった。
ブランドオーラの起源が、最初は皇室の権威に由来し、
後に市民革命から大衆社会化の中で、デザイナー個人の神話伝説化を要請するようになる。
おそらくマルクスの価値形態論あたりを基礎とし、
ヴェブレンやボードリヤールの消費社会論に依拠した分析は、さほど新鮮というわけではない。
「偽物」に対する伝統派・マス派、両ブランドの態度・戦略の違いに注目した部分が目新しいところか。
著者自身ブランド好き女の嫌ったらしさをそこはかとなく臭わせていて、あまり好感持てず。
(合法的コピー商品を売っている店に2度も取材に行っているのに商品を買わない(笑)
…のはともかくとして侮蔑感が滲み出ている。非合法コピーをバカにするのはいいけど。)
さらにダメ押しのように、スウェットショップの第三世界搾取の話とか環境問題の話が
お約束の岩波的良心丸出しかつおざなりに付け足されていて、ちょっとゲンナリ。
まぁこの辺は個人的な偏見による感情的意見なので本の評価に反映させるのはフェアじゃないかも。
ブランド自体に縁のないダサ人種としては、常識の欠落を埋めてくれてありがとうとだけ言っておきたい。